年商30億円を超える会社は日本にどれぐらい存在するかご存知でしょうか?
このデータを見ていただくと、統計値ですが約3%です。つまり、年商30億円を超える会社というのは日本の会社の中で「売上上位3%の会社」であると言うことができるでしょう。
年商30億円の会社はそれだけ凄い会社であると同時に、辿り着くまでが非常に難しい「壁」であるということです。
年商30億円を超えられない会社の特徴
私は独立してからこれまで100社以上の会社をサポートしてきましたが、これまで経験の中で年商30億円を超えられない会社の特徴は大きく5つあるということが分かりました。
まずは年商30億円を超えられない会社の特徴を1つずつ解説していきます。
年商30億円を超えられない会社の特徴【1】社長が社内におけるほぼ全て意思決定権をもっている
年商30億円を超えられない会社の特徴の1つとして、社長が社内におけるほぼ全ての意思決定権をもっている状態であることが挙げられます。つまり、社長以外に社内で意思決定できる権限をもっている社員がいない、という組織です。
社長は会社のトップであり、特にオーナー企業であれば会社に何かが起こった時の全ての責任を被るわけなので、会社の命運を左右する意思決定を社長が行うのは当然のことです。
しかし、年商30億円を超える組織をつくっていくためには、会社の利益に大きく響くような重要案件以外や、社長がわざわざ意思決定をしなくてもいい案件などは、意思決定のプロセスを変えたり、徐々に権限移譲をして社員に任せる必要があります。
権限移譲をすることで、意思決定権をもたされた社員は間違いなくこれまで以上の成長を見せます。
また「社長がしなくてもいい仕事」が減ることで、会社の将来の売上や利益アップにつながるミッション、つまり「社長がやるべき仕事」に対しての時間をこれまで以上にとることができます。
役職あれど鍋蓋型組織
全ての意思決定を社長がする会社でも、組織の構成上、社員には「部長」「課長」「主任」などの役職が与えられ、一見すると「階層型」の組織になっています。しかし、実際には社長が全ての指揮・命令をしている「鍋蓋型」の組織になっていると言えるでしょう。
鍋蓋型組織の場合、社員は全員「社長を見て」仕事をします。そしてその場合、役職だけのミドルマネジメントの言う事を聞く部下はほとんどいません。つまり中間マネジメントが機能していないということです。組織としてのマネジメント力が社長個人に集中している限り、ミドルマネジメントは育たず、それは社員が育つ数とスピードの低下につながります。
年商30億円を超えられずに伸び悩んでいる会社の一つの特徴として、このような組織構造になっている場合が非常に多いです。
年商30億円を超えられない会社の特徴【2】社長が現場のトップとして活躍している
社長が現場の最前線に立ち、営業、サービス、管理、など社内全ての部署のトップとして活躍していることも年商30億円を超えられない会社では珍しくありません。
具体的なイメージでいうと、営業においては社長が会社の売上の半分以上を自分で稼いでいます。
また、サービスにおいては提供するクオリティが社内でダントツに高い。管理に関しても、人材採用の面接は社長自身が積極的に介入し、人材評価や人材配置についても社長が全てを決定し、経理の分野でも銀行対応やキャッシュフローを考えた資金繰り、投資案件の判断なども全て社長自身が行います。
このように会社の機能としての「攻め(営業部門など)」と「守り(管理部門など)」の両方で社内一の活躍をするため、私は社長が「エースで4番」の状態であると表現しています。
社長一人の限界値
年商30億円を超える組織をつくる場合、社長がいきなり現場から抜ける、というのは無理がありますが、組織をつくりながら徐々に現場から離れていく必要があります。
社長がどれだけ凄いエースで4番の選手であっても、人間が一人でできる事には限界があります。社長が現場のトップで活躍し続けても、売上の伸びはいつか止まってしまうのです。それは「社長一人の現場の力の限界値」でしょう。
社長自身が現場で活躍して出せる成果が「1倍」であれば、社長が監督となり社員を成長させ活躍できる人材を増やすことでその成果が「3倍」にも「5倍」にもなります。
私は社長自身が現場トップとして活躍すればするほど、社員が育たず、気づけば「社長一人に依存した会社」になっていた、という会社を非常に多く見てきました。そういった状態でも、「自分が現場に立ち続け、会社も利益が十分に出て、従業員にも給与を多く払えてみんな幸せ、という会社のままが良い」という思いをもっていらっしゃれば何も変える必要はないと思います。
しかし、年商30億円を超えていきたい、自分が現場に出なくても売上を伸ばせる会社にしていきたい、という思いをもっていらっしゃる社長であれば、社長が「監督社長」となり現場のトップから離れられる組織をつくる必要があります。
これは社長自身が「いつまで現場に出ていたいか?」そして「物理的にいつまで現場に出られるか?」を踏まえて考えるべき事でしょう。不測の事態が起こり、社長が現場から離れざるを得ない状況になった時、また、社長が年齢を重ね、従来の現場でのパフォーマンスを発揮できなくなった時、安心して現場を離れられる会社であるかどうかは会社を経営している社長自身の「命題」とも言えるのではないでしょうか。
年商30億円を超えられない会社の特徴【3】経営目線で日々仕事をしているのは社内で社長だけしかいない
「ウチの社員には全く経営目線がない・・・。」という社長は非常に多いのではないでしょうか。年商30億円を超えられない会社の場合は特にそれが顕著にあらわれます。
「経営目線」には様々な要素が含まれていますが、最も分かりやすいのは「経営数値」でしょう。より多くの売上とより少ないコスト・リスクで利益を最大化させる、という経営者にとっては当たり前の目線が社員には足りていない状態です。
経営目線のない社員の多くは、会社全体を見た時の「全体最適」ではなく、自分自身から見た時の「部分最適」の思考が強いため、そういった状態に陥りやすいと言えるでしょう。
例えば人材採用において経営目線と現場目線では大きな違いが起こりやすいです。社員からは「忙しくて人手が足りないから社員を入れてくれ」という意見がよく出てきますが、経営目線からすると、人材を一名採用すると年間〇〇万円の経費がアップする、そうなると赤字になる、または利益が〇〇万円減るから社員一人当たりに支払う賞与もが〇〇万円減る、という目線で物事を考えます。
もちろん社長としては、一名採用した経費以上に利益が上がることが確実であれば採用しますが、そういった可能性が低ければ人材を採用することに二の足を踏みます。
このように社長と現場社員の日常業務の様々な事象に対する捉え方、レイヤーの違いが、年商30億円を越えられずに伸び悩んでいる会社には多く見られます。
目線の違いが社員との距離を離す
こういった目線のズレが生じたままだと、社長と社員の距離はだんだんと離れていくことになります。
社長と社員がお互い「何で分かってくれないんだ」という思いを抱えたまま、日々フラストレーションが溜まっていきます。同じ方向を向いて仕事に取り組んでいない組織は効果的に機能しません。
社員が経営目線をもてるようになると、普段何気なく使っている会社の経費に対しても、意識の仕方が変わってくるでしょう。
「とにかく売上」と思っている営業社員も利益志向がつくことによって営業の仕方と成果が全く変わることもよくあります。自社で商品やサービスを開発している会社であれば、開発や製造に関わる上でのお金と時間両面でのコスト意識も断然違ってきます。
社長としても経営目線で社員とコミュニケーションをとれるようになれると、おのずと社員との距離が近くなり、日々の仕事がどれだけスムーズにいき、組織が効果的に機能するかが容易に想像できると思います。
年商30億円を超えられない会社の特徴【4】マネジメントが個の能力に依存している
年商30億円を超えられない会社では、マネジメントが個の能力に依存している状態であることが多いです。
例えばマネジメントの重要ポイントの1つである「部下育成」。
社内に部下育成ができる人材が社長のみである場合や、上司Aと上司Bがいる場合、上司Aは部下を育てることはできるが、上司Bは部下を育てることができない。また、その上司Aも育てられる部下と育てられない部下が存在し、部下の性格やパーソナリティで偏りがある。などマネジメントが個の能力に依存しているがために、部下育成にバラつきが生じる状態になっています。
このような状態の組織の社員インタビューでよく聞く言葉は、「上司が誰かによって自分の将来が決まってしまう」「今の上司はAさんなんですけど、自分としてはBさんの部下になりたいです」という言葉です。この言葉はまさにマネジメントが個についている状態のまま放置されている組織といっていいでしょう。
そのまま状態が続くと、部下育成と同様に「目標達成度」や「業務成長レベル」、「労働時間」などにも上司によってバラつきが生じるため、目標達成の再現性が低い、サービスの品質が標準化されない、残業時間が非常に多い、など会社として様々なリスクを抱える可能性を高めます。
バラつきの生じる組織のままであれば、当然、企業成長もスムーズには進みません。売上においても、その成長にバラつきが生じ、停滞を招く原因にもなります。
個ではなく組織にマネジメント力をつける
こういった状態から脱却するためには、個ではなく組織にマネジメント力をつける必要があります。いわば「マネジメントの在り方をチェンジする」ということです。
部下育成においては、管理職に対して部下育成の仕方を教育したり、会社として部下育成の仕組みをつくるなどして、マネジメント力を「個人」につけるのではなく「組織」につけていきます。
組織にマネジメント力をつけることによって「どの上司の下であっても会社が求める水準レベルに社員が育つようになっていく」「目標を達成する社員が続出する」「労働時間や残業時間が見違えるように減る」という結果を生み出していきます。
これが出来ると「素養の良い人材だったら育った」「才能のない人材だったから育たなくて辞めた」ということが減り、最低限の水準を満たしている人材であれば、誰でもある程度のレベルまで育つという形で「人材育成の再現性」を高くすることができます。このような状態になれば売上は安定的に上がっていきます。
また、マネジメントの再現性が高くなれば人材の「アタリ・ハズレ」による「博打」のような組織づくりではなくなり、安定した組織づくりが可能となるため、会社経営をしている社長からすると安心した会社運営ができるでしょう。
そのためにも組織にマネジメント力をつける必要があるのです。
年商30億円を超えられない会社の特徴【5】社員が一人前になる前に退職してしまう
中小企業の人材採用は年々厳しくなっていく一方です。そのような中で、苦労して採用した人材が一人前になる前に退職をしてしまうことも年商30億円を超えられない会社では多く見受けられます。
「苦労したが何とか採用できて、手塩にかけて育ててきたのに3年で退職してしまった。これからという時に・・・」という声をよく聞きます。
退職理由は人によって異なりますが、社員が一人前になる前に退職してしまうことが長く続いている会社の場合は、退職者の退職理由はほぼ同じであることがほとんどです。
年商30億円の会社規模の場合、業種によっても異なりますが従業員数はおよそ100名であり、人材が定着しない会社が年商30億円を超えることは非常に難しいと言えます。
辞めて欲しくない人が辞めないような構造をつくる
中小企業庁の「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」(2014年12月)の資料に準拠すると、中小企業の離職率(入社3年以内)は、中途採用者で30.6%、新卒採用者で44.2%という数字が出ています。よく言われる「3年で3割辞めていく」という言葉は残念ながら不変の法則と言ってもいいでしょう。
離職率が高い会社が決して悪いとは思いません。「組織が成長していくためには、新陳代謝こそ必要だ」と豪語する社長もいらっしゃいます。
もちろんその考え方も正しいと思いますが、離職の「在り方」によるのではないでしょうか。在り方とは「辞めていく理由」と「辞めていく人」です。
もし、辞めていく社員が将来有望で「辞めて欲しくない社員」だとすれば、それは適正な離職の在り方ではないでしょう。「適正な新陳代謝が必要」という考え方も、その代謝の対象は「自社にいたらお互いが不幸になる」という社員を指していると思います。
しかし、辞めて欲しくない人材の離職が続くとなれば、当然、手を打たなければいけません。手の打ち方は辞めていく理由を正確に把握することです。
退職していく人材が退職理由を正直に話すことは半々ぐらいと言っていいでしょう。しかし本人から正直な理由を聞けずとも、社内に流れている雰囲気や普段の会話などから退職理由などは分かるものです。
退職理由のデータを一つ掲載します。これはエン・ジャパンが出しているデータで、様々な企業でも退職理由のデータを出していますが、いずれも上位の理由は似ています。
特に必ず上位に上がるのが「給与」です。「離職率を下げるために給与水準を上げましょう」とは言いませんが、自社の退職理由が給与に関連する理由が多いのであれば、辞めて欲しくない人に適切な給与を払う仕組みや、将来的に有望な人に払う給与水準が「見える」ようにすることで、離職率低減に大きな効果があります。
大事なのは、いかにして辞めて欲しくない人が辞めていかないような「仕組み」や「構造」をつくることです。
年商30億円を超えるためのポイント
このような特徴をもつ会社が、年商30億円を超える会社になるためのポイントは「組織化」です。
従来の「鍋蓋型」の組織から「階層型」の組織へと変貌を遂げる必要があります。役職がある、という「形式上」だけの階層型組織ではなく、「実質的」な階層型組織でなくてはなりません。
実質的な階層型組織とは「マネジメントが機能している」組織であることです。
マネジメントが個についている場合、目標管理や部下育成などのマネジメントにバラつきが生じるため、マネジメントが機能しているとは言い難い状態です。そうではなく、会社や組織にマネジメントがシステムとしてつくことで目標管理や部下育成などのバラつきや波がなくなり、安定的に売上を伸ばして成長していけるような組織が、マネジメントが機能している「実質的な階層型組織」です。
社長が「エースで4番」から「監督」へ
実質的な階層型組織となるためには、社長が「エースで4番」の役割から「監督」へと役割を変えていく必要があります。
野球に例えると、社長自身が「投げて」「打って」「守って」「仲間を引っ張る」という「プレイヤーをしながら直接マネジメントする」役割から、「コーチをマネジメントする」「コーチに選手を育ててもらう」「コーチに選手をマネジメントしてもらう」という「監督の立場で間接マネジメント」をする役割へと変えていく、ということです。
これを会社に置き換えると、社長自身が自ら全社員のマネジメントをする形から、管理職といわれるミドルマネジメントに社員への直接マネジメントを移譲し、自身が監督として管理職をマネジメントする、という組織構造をつくらなければいけません。
その構造をつくるために、いかにしてマネジメントを機能させ、今以上に組織を強固なものにしていくかが年商30億円を超える最大ポイントです。
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