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中小企業が売上アップを目指すためのシンプルな2つの視点

組織

2019年版の中小企業白書によると、日本国内における全企業のうち、99.7%が中小企業とされています。
また、中小企業庁が発表している「原因別の倒産状況」によると、中小企業の倒産原因の1位が「販売不振」で、圧倒的多数を占めます。(635件中、451件 ※平成30年2月15日公表データより)

コロナ禍の相まって、当然ながら中小企業が存続するために、そして更に企業成長していくために売上アップは最重要課題でしょう。

ここでは中小企業が売上をアップするシンプルな2つの視点という形でご紹介していきます。

■「戦略」と「組織」

中小企業が売上アップを目指すにあたって、シンプルな考えは「戦略」と「組織」それぞれをどのように構築し、運営していくかに尽きます。

まず「戦略」は企業として「何を」するかです。
「どのような市場やターゲットに対して、その市場・ターゲットのニーズを満たすような商品・サービスを販売していくか。」

戦略と言っても小難しい事は色々とありますが、簡潔に言えばこのような表現で十分です。
まずは中小企業が売上アップを目指す上で、この戦略が明確であり、かつ概ね正しくある事が大前提です。

■戦略

どの市場を狙っていくか、これはビジネスを展開する上で基本となる考え方ですが、新規事業を立ち上げる場合においては間違っても市場が成熟している、または衰退している分野を狙ってはいけません。ただし、現在事業をしている市場の中で継続して戦っていく事を戦略とする場合ではその限りではありません。

こういった市場に対する1つの参考として以下の成長戦略のマトリクスがあります。

左上の①市場深耕戦略は既存市場に対して既存商品をより拡販していく戦略です。
中小企業がとるべき最もポピュラーな戦略で、基本的には先述したようにその市場自体が成熟、衰退しているようであればその市場で中小企業が売上アップをしていくのは難しいですが、競合他社のシェアを奪える余地がある場合であればこの戦略でも売上アップは目指せると言えるでしょう。

もし、市場が成熟、衰退していて、かつ競合他社のシェアを奪取することも難しいのであれば、その市場で売上アップする事よりも「成長している市場を狙う」②市場開拓戦略や、もしくは「現顧客に別商品サービスを拡販する」③商品開発戦略という戦略へシフトした方が良いと言えます。

中小企業が売上アップを目指す上で④の多角化戦略もあり得ますが、企業として未知の分野に事業進出していく事に関しては、経営上のリソース(人・物・金・情報)が豊富であれば可能だと思いますが、多くの中小企業はリソースが潤沢ではない状況なので、この戦略は考える中で最も優先順位が低いと言えるでしょう。

また④多角化戦略に関しては、中小企業の場合M&Aを視野に入れた方が良いでしょう。

近年では中小企業同士のM&Aも売上アップを目指す上でポピュラーな戦略となっています。自社で新規分野に関するノウハウがないのであれば、そのノウハウを持っている経営リソース(人・物・金・情報)を丸ごと買った方がリスクが少ないとされています。

■プロダクトライフサイクルでシンプルに考える

こういった観点から、中小企業が売上アップを目指す戦略の土台となる考えは2つで、1つは「成長している市場に参入し、市場全体の伸びによって自社の売上も比例してアップする」という考え方、もう1つは「成熟、衰退している市場であるものの、競合他社のシェアを奪い、自社の売上をアップする」という考え方です。

プロダクトライフサイクルにおいてどの位置にいるかにより、そもそもの市場参入など戦略を捉えないといけません。

1つ目の「成長している市場に参入し、市場全体の伸びによって自社の売上も比例してアップする」という考え方については、自社で新規市場を作り出す側、つまり導入期からつくっていくか、市場調査をした上で、現状成長期にある市場を狙って参入するか2つの考えがあります。

先述したように前者の自社で新規市場をつくるということは難易度が高く、初期投資もかかるため、中小企業が売上アップを目指す上でリスクを抑えながら事業進出するのであれば、後者のすでに成長市場として芽が出ている市場を狙った方が良いです。

2つ目の「成熟、衰退している市場であるものの、競合他社のシェアを奪い、自社の売上をアップする」という考え方については、後述する組織の考えとも直結しますが、戦略的に競合からどのようにシェアを奪っていくかを構築し、組織を運営していく必要があります。

【参考】

上記のプロダクトライフサイクルに関連したフレームワークにPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)があります。

市場に新商品を投入した際は、必ず右上の問題児からスタートしますが、そこからシェアが取れればスターになり、やがて金のなる木に育ちますが、シェアが取れなければ負け犬商品になる、というシンプルな考え方です。

金のなる木になった商品で得たキャッシュで、新たに新商品開発、販売(問題児)を行い、次の金のなる木をつくっていく、という連鎖を続けていく事が基本とされています。

特にこの戦略遂行を得意としているのが大塚製薬です。

ポカリスエットやオロナミンC、カロリーメイトなど成熟した市場で継続して売れ続けるロングセラーによって生み出したキャッシュで、新たな商品(問題児)を市場に投入し、次の金のなる木をつくる、という好循環サイクルを企業として意図しています。

■組織

戦略が明確であり、かつ概ね正しくあっても売上が思ったように伸びない、という中小企業が売上アップを目指す上で次に手を打つのが「組織」です。早急な売上アップが目的であれば、組織の中で特に強化すべきは「販売力」です。

一口に販売力といっても様々な観点がありますが、主な構成要素としては

【1】商品力(サービス力)
【2】集客(マーケティング)
【3】営業力

の3つです。

■販売力

【1】商品力(サービス力)

戦略にも関連する事ですが、自社の商品・サービス力が高く、顧客にとって魅力的であればあるほど販売力は高まります。
自社独自の商品サービスをもっている企業で、そもそも魅力が低い商品・サービスを扱ってる場合は、商品開発を進めて商品サービスの魅力や価値を上げなければいけません。

代理店商売のように他社商品サービスを扱っている場合、競合会社も同じ商品サービスを扱っている場合が多いため、商品・サービスの「機能」以外で価値づけを行い、差別化する必要があります。

このように中小企業が売上アップを目指す上で、自社の商品サービス、または自社そのものとして、どのような価値を顧客に感じてもらい、魅力的に思ってもらえるかを常に考え、改善していかなくてはなりません。

【2】集客力(マーケティング)

自社の商品・サービスを認知してもらい、自店舗への来店や商談へと繋げる役目が集客(マーケティング)です。
主にB2Cの商売で店舗型、教室型でビジネスをしている企業の場合、より多くの顧客に来店してもらえるように認知されなければいけません。また、B2Bのビジネスモデルであれば、より多くの企業担当者・決裁者との商談を獲得する必要があります。

【3】営業力

中小企業が売上アップを目指すための販売力強化のための3つ目が営業力です。
営業力は【2】のマーケティングとも関連します。【2】が物凄く卓越していれば、人による営業をせずとも商品・サービスが売れるからです。
ただ、そのモデルは主に低単価の商品サービスを扱っている場合における考え方で、高単価のビジネスをしている企業にとっては、【1】商品力と【2】集客力で自社商品サービスに魅力を感じてもらったとしても、最終的には人による営業を行わなければ契約に結び付く事は難しいと言えるでしょう。

主にB2Cの商売で店舗型、教室型でビジネスをしている企業の場合、この営業力は「接客力」といってもいいでしょう。良い接客をすることで新規顧客の「成約率」や「単価」が高まることはもちろん、既存顧客の「リピート率」も高まり、中小企業の売上アップに大きな影響を与えることができます。
B2Bのビジネスモデルの企業であれば、商談による営業力アップが必須で、この商談におけるスキルやレベルが上がれば必然的に先述した新規顧客の「成約率」や「単価」、既存顧客の「リピート率」が上がります。

これら3つの販売力の要素はそれぞれが独立しているわけではなく、全てが強化されないといけません。

商品力がどれだけ優れていたとしても、集客できなければ顧客へアピールすることができず売れません。また集客できたとしても営業力が低ければ、低新規顧客の「成約率」や「単価」、既存顧客の「リピート率」は低くなるでしょう。
また商品力が低ければ集客できませんし、集客できて営業力が高かったとしても商品サービス上の比較で競合他社から負ける可能性が高いです。
このように販売力における全ての要素を連携して高めていかない事には、中小企業が売上アップを目指す土台をつくることはできないのです。

このような「販売力」がしっかりしている中小企業でも売上アップできずに悩んでいる会社も多いです。
その場合は次に「人材力」という観点をもちましょう。

自社が企業として優れた商品・サービスをもち、マーケティングのシステムも良く、営業力が抜群だったとしても、その力を使う「人」に課題があればそこがボトルネックになります。

人材力に関しても構成要素として以下の3つを主に挙げます。

■人材力

【1】採用力

組織として販売力を機能させるための人材を採用する力が高くなければいけません。
採用力は世間一般でいう「優秀な人材」を採用できる力ではなく、「自社の理念や風土に適合した人材」を採用する力です。
中業企業の中途採用、新卒採用のサポートをしてて如実に感じるのが、例えば他社で圧倒的な営業成績を上げた実績を引っ提げて入社してきた人材でも、別の会社になると全く力を発揮できない事もしばしば目にします。

そういった現象の多くが、入社した実績抜群の人材が「自社の理念や風土に適合した人材」ではなかった場合であることが常です。
逆に前会社ではそこそこの実績しか上げられなかった人材でも、自社に入社した途端、あっという間に「売れる営業」になることも珍しくありません。
いかに「環境」で人が変わるか、という面においては、この採用力が物語ってくれています。

【2】育成力

採用した人材も放っておけば育ってくれるわけではありません。会社の貴重な戦力になってもらえるように育成をする力を会社として養っていく必要があります。
コロナ禍で大企業がこぞって求人を萎めたため、今現在(2020年10月)でいうと中小企業が人材採用をする上でチャンスの時期だと言えます。

育成においては外部研修でも良いのですが、日常のOJTとは別に会社として「育成の仕組みと仕掛け」をつくっておくことが重要です。
「採用したけどなかなか育たない」「育ってきたと思ったらすぐに辞める」という中小企業の社長の嘆きは多く聞きますが、そういった会社ほど社内に社員を育てる仕組み、仕掛けがない場合がほとんどです。

【3】モチベート力

人にスキルがあったとしても、そもそも「意欲的に仕事に取り組む」というモチベーションがなくては売上アップは順調にいきません。逆にスキルが低い人材でも、継続的にモチベーション高く仕事に従事していれば、成果を出してくれます。

社員のやる気を常にキープするだけでも、中小企業の売上アップが驚くほど簡単にできることも珍しくありません。それだけ人の力は凄いものがあります。
「社員が受け身仕事」「自分から進んで仕事をしない」という悩みをもっている中小企業の社長が非常に多いと思いますが、それは会社として社員のモチベーションを高い状態でキープできるような体制にすることでほとんどが解消されます。

まとめ

中小企業が売上アップを目指すためのシンプルな2つの視点は「戦略」と「組織」です。この2つはそれぞれが独立しているわけではなく、密接に関連しています。片方が良くても、もう片方が悪ければ望むような成果は得れないかもしれません。

売上をアップするための施策には色々な手法がありますが、まずはシンプルにこの2つの視点から自社の課題を見つけ、そして解決策を粛々と実行していくことで売上アップを目指すことができます。

 

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