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評価基準の作り方 | 企業が作るべき評価基準とは?

人事評価制度

最近、「評価基準はどうやって作るんですか?」というお問い合わせを多くいただくので、評価基準の作り方をお伝えしていきます。

| 評価基準はなぜ必要か?

評価基準はなぜ必要か?ですが、まずは評価基準がないことで会社にどのようなデメリットが生じるかをお伝えします。

■社員の人事評価制度に対する不満

社員の人事評価制度に対する不満のアンケート調査です。

【調査概要】
調査期間:2018年2月7日(水)~2018年2月12日(月)
有効回答:1532人(全体) *各項目に回答者数を記載
調査方法:インターネット調査(日経BPコンサルティング調べ)

出典:アデコ

Q. 人事評価制度に不満を感じる理由を教えてください。(複数選択)

複数回答ですが、人事評価制度に対する不満の断トツ1位が「評価基準が不明確」です。当社が人事評価制度構築のサポートをする際、必ず社員の方にインタビューをする「社員ヒアリング」を行うのですが、この時に社員の方々からほぼ100%と言っていいほど出る言葉が「評価基準が不明確」です。

また、

Q. 評価が適切にできていないとお答えになった理由を教えてください。(複数選択)

これは評価者である上司に対する質問で、前問の質問「Q. 自分が適切に評価を行えていると思いますか。(単一選択)」で「どちらかというとそう思わない」または「そう思わない」と回答した約20%の評価者を対象にした質問です。

こちらも1位は「評価基準があいまい」という点です。

これらから、自分自身の評価に対する不満という観点ももちろんありますが、評価基準があいまい、または評価基準が不明確なために評価者である上司も、被評価者である部下も双方が不満であることが分かります。

しっかりと評価をしてもらえない部下からすると、「何でしっかりと評価をしてくれないんだ」という気持ちが上司へ向き、上司に対する信頼性も低下し、マネジメントが機能しにくくなります。

また、上司としてはそもそも評価基準があいまいな状態で評価しなければいけないため、しっかりとした評価をしたくてもできない、という悪循環になってしまっている組織が非常に多いです。

■退職に繋がる

次のアンケート結果は「退職理由」です。

アンケート実施期間:2017年5月1日(月)~2017年5月31日(水)

有効回答数:6,355名

出典:エン・ジャパン

Q1 退職を考え始めたきっかけを教えてください。

1位は「給与が低かった」ですが、2位は「評価や人事評価制度に不満があった」です。基本的に評価と給与が連動している場合がほとんどなので、同じような種類の回答が上位にきていると言っていいでしょう。

これらの観点から、評価基準がなぜ必要か?の理由がお分かりいただけると思います。入社した人材に対して明確な評価基準を基に評価することで、モチベーション向上、離職防止はもちろん、しっかりとパフォーマンスを発揮してもらうことで企業の売上を上げていきます。

| 評価基準の種類

評価基準の作り方をお伝えする前に、そもそもどのような土台で評価基準を作らなければいけないか、その方向性を明確にしなければいけません。その土台に関しては大きく4つあります。

【1】年功評価

年功評価はその名の通り、いわゆる「年功序列」です。

入社した段階の年齢をベースとして昇給昇格などを決定する考え方です。日本ではこれまではこの年功評価が主でした。新卒一括採用の流れから、入社年次から人事評価を管理する上では年齢と共に賃金を上昇させて、退職時には給与が下がるという状態を作り出したかったからです。

しかし、近年では中途採用者の増加や、少子高齢化問題などで若手社員を確保することが難しくなってきており、「年功序列離れ」が多くなってきています。

年功序列は賛否両論もあるように、それぞれメリットとデメリットがあります。

メリット

・社内の教育システムの完成度が高くなる

年功序列を導入する事により、勤続年数が長くなることで、構築した教育システムの育成結果をしっかりとデータとして把握する事ができるため、そのデータを活かすことで教育システムが更に良いものになり、完成度が高いものが出来上がります。また、年功序列により年長者が新入社員に追い越されてしまうという心配が無いため、上司が部下の育成に手を抜く、ということが少なくなる組織になりやすいです。

・人事評価が明確で、評価しやすい

年齢や勤続年数に伴って賃金や役職が上がっていく年功序列は、当然、人事評価基準と賃金体系が非常に明確であるため、評価も行いやすいです。また、勤続年数が長くなることで、労働者一人一人の適性も細かく把握する事ができるので、企業内における人材配置の適材適所が効果的に行えます。

・会社への忠誠心(愛社精神)が高まりやすい

年功序列の企業の場合、長く勤める人材が多くなる傾向が高く、長く勤めれば当然自社に対して愛着が沸きます。企業によっては年功序列導入により離職率が下がり、また、職場に対する定着率が高まるという事例も多く、長期に渡って同じ職場環境で仕事を行う事によって、会社に対する忠誠心や愛社精神が高まりやすくなります。

・社員同士の連帯感が固くなる

社員の勤続年数が長くなれば、当然多くの業務において協力し合うことも増え、日々の中で連帯感は固いものとなっていきます。これは年功序列によって、役職としての上下関係と年齢における上下関係が逆転することがないため、上司が年上であることが当たり前となり、指導を受ける側の心理的抵抗も少なく、上司と部下の信頼関係の構築が比較的容易いことも大きく影響していると考えられます。

デメリット

・人件費が高騰しやすい

年齢による賃金の上昇を確約している以上、放っておいても年々その賃金は増えていきます。年功序列の影響により企業規模を拡大していった場合、更に多くの労働者を雇用することとなり、その全ての労働者に対して同様の賃金上昇が発生するため、企業全体として考えた場合、人件費の上昇スピードは非常に早くなります。

・「ぶらさがり社員」の増加

ぶら下がり社員とは、最低限の与えられた仕事はこなすが、自発的にプラスアルファを生み出そうとする前向きな姿勢は一切見られず、現状維持を第一に考える社員のことです。ぶら下がり社員の増加は、年功序列により、求められている以上に努力をしなくても賃金が増えていくという弊害が生んだ結果とも言えます。

・若手社員のやる気低下

年功序列のために、いくら自分が上司より仕事が出来ても評価が高くても上司より上に昇進はできないため、仕事に対するやる気が低下していく傾向が高いです。そうすると「実力のある社員」から離職していく可能性が高まります。上記のぶら下がり社員ではありませんが、そういった特性や考え方をもった社員だけが「会社に残ってしまう」ことになる恐れもあります。

【2】能力評価

能力評価とは、与えられた職務を遂行する能力の評価であり、一般的に「職能資格要件書」または「職能資格基準書」などで定める場合が多いです。具体的には、与えられた職務を遂行する上で必要な「知識」や「技能」などが評価材料となります。また、潜在的な能力として「理解力」や「企画力」「折衝能力」なども評価される場合があります。

能力評価のメリットとしては、従業員の持っている能力を的確に把握することができるので、業務内容と能力のミスマッチを防ぐことができます。また、従業員も会社から求められている能力を知ることができるため、必要な知識の習得やキャリア形成に自ら効果的に取り組むことが可能になります。

デメリットは、一般的に能力は経験を積むことで向上していくものと考えられています。しかし「経験を積むこと」と「年齢を重ねること」が同等に解釈されることが多いため、年齢が上になるほど能力も上であるという考え方が根付くことにより、年齢を一つの基準とした年功的評価に陥りやすくなると言えます。

【3】職務評価

職務評価は、職務によって評価を決定する制度です。各職務の内容や性質を分析し、必要とされる知識、技能、精神的・肉体的負荷、責任、作業条件などの要素に基づいて、相対的な価値を評価します。工場などに勤務するブルーカラー労働者に適応しやすい人事評価制度といえます。例えば工場現場の仕事であれば、工程ごとに品質や処理スピードなどが明確に見えるため、「この難易度の仕事をこなしているから〇評価」という形で、職務に対しての相対的評価を分かりやすく決定できます。

職務評価のメリットは、職務と給与が合致して合理的であるため非常に分かりやすい評価が可能になることです。また、基準となる職務内容が明確なため、専門家の育成に効果的と言えるでしょう。また、基本的には相対的評価になるため、総人件費は低めになる場合が多いです。

デメリットとしては、組織や職務の変更の融通が効きにくいです。職務内容も明確に定められているために、外部要因などで何かしらの変化があった場合の対応力は低いと言えます。また、能力やスキル、という目で見えない部分の評価が多くなるため、評価基準を作る場合においても、実際の運用をする場合においても、非常に高い運営能力が必要とされます。

【4】役割評価

役割評価とは、社員の仕事内での役割に応じて評価を決定する制度です。役職ではなく仕事内容を主軸においた制度であり、仕事の難易度などに応じて役割を決定し、評価をする制度です。具体的には、企業がミッションとしている仕事内容を細分化し、評価の軸としていきます。評価基準の作り方として多いのは、現場サイドの管理職との打ち合わせを行いながら仕事内容の難易度などを決定していきます。

メリットとしては、社員一人一人の役割が明確になり、役割と給与が合致するので合理的な評価を行うことができる点です。また、外部環境や組織体制など企業を取り巻く様々な要因による変化に対応しやすい組織をつくることができます。

デメリットとしては、評価基準を作っていく際にはある程度のノウハウが必要となり、運営していく際も高い運用力が必要となります。また、ぶら下がり社員ではありませんが、役割の拡大を好まない社員に対しては動機付けが難しい評価基準となります。

以上4つの種類から、自社に合った土台づくり、または、今後目指すべき会社の方向性を鑑みてどの土台で評価基準を作っていくかが変わってきます。

| 評価基準の作り方

評価基準をどのようにして作っていくかは、先述したように、まずはどういった組織にしていきたいかの土台を決める必要があります。年功序列、能力、職務、役割、のいずれかが軸となった上で詳細な評価基準を作っていきます。

当社が推奨している軸は「役割」の軸です。なぜなら、役割軸は高い運用力は必要としますが、今後は特に時代や市場の激しい変化に会社として柔軟に対応すべき組織を作り上げる必要があることと、人事評価制度は「給与を決めるため」だけの目的ではなく、売上を上げられる組織を作る「マネジメントツール」として作るべきだからです。

役割評価を土台にした場合、会社の方針や市場の変化により社員に行って欲しい仕事が変わる際、スムーズに評価基準と連動させることができます。また、一つ一つの役割についての幅(仕事の種類)と深さ(仕事の難易度)をそれぞれ定義づけるため、評価する方もされる方も明確で分かりやすい評価基準を作ることができます。

ここでは役割評価を軸とした評価基準の作り方をお伝えしていきます。

役割等級制度の設定

役割等級制度という観点は、年功や能力による序列(等級)をつくるのではなく、仕事に対する役割の多さや高度差によって序列をつけていく、という考え方です。企業のミッションから導き出された経営計画を、個人レベルの役割に割り振り、これを等級として設定し、その役割に基づいて目標設定、業務遂行と成果測定を行う人事マネジメントを可能にします。

【1】役割の幅(種類)の洗い出し

まずは役割の幅、という表現をしますが、評価基準を作る上で役割の種類を洗い出していきましょう。当然自社には様々な仕事の種類がありますので、大項目・中項目・小項目という形でカテゴライズしていきながら、仕事の種類を洗い出していきましょう。

また、その際に「その仕事は会社の売上アップ、コストダウン、リスクダウンにそれぞれどれぐらいのインパクトを与えられるかも指標化して明示していくと、役割自体のレベルの上下もつけやすくなるので、ぜひ設定してみましょう。インパクトに関しては、どれだけ直接的なものか、間接的なものか、についても記載することで重要度を示す基準にもなっていきます。

また、企業のミッションとして経営陣からも、「今は発生していないけど、今後はこの役割を会社として取り入れて社員に行ってもらいたい」という仕事を考えてつくっていくこともおススメしています。それが会社から社員に対する期待役割としてのメッセージになります。

【2】役割の深さ(難易度)の設定

仕事の種類を洗い出したら、それぞれの仕事の深さ、つまり難易度を設定していきます。例えば、コンピテンシーでいう所のひと口に「部下育成」と言っても、新卒社員を育てるのか、主任クラスを育てるのか、課長クラスを育てるのかによって難易度は異なります。また、「対人スキル」などの評価もそうでしょう。誰向けにどのようなスキルが必要かをレベル分けする必要があります。こういった観点で、仕事の一つ一つに関して難易度を設定していきましょう。

ここがしっかりと設定されないと評価基準が明確になりきれず、役割評価が効果的に機能しません。定量化できるのであればかなり有効ですが、定量化できない指標の仕事でもしっかりと難易度を設定する必要があります。

【3】等級数の設定

等級数の設定をしましょう。つまり序列の数です。【1】【2】で洗い出した役割から見て設定していくことが望ましいでしょう。等級数は現状の組織体制や人数を見ながら設定するのではなく、3年後や5年後など中期的なビジョンと組織体制を鑑みて設定していきましょう。そうすることで会社成長にリンクした評価基準を作ることができます。

【4】各等級に対する期待役割の設定

等級数を設定した後に、各等級に対する期待役割を設定していきましょう。当然上位等級ほど、洗い出した中で難易度の高い内容の仕事、役割が設定されていきます。この期待役割こそが社員一人一人の明確な評価基準となります。

【5】目標管理制度との併用

【4】までで作った評価基準に関しては、各等級に対しての役割となります。つまり「この等級に位置する社員の役割はこれです」と明示しているものです。

これとは別に、目標管理制度と併用することをおススメしています。目標管理制度はその名の通り、目標を管理する制度です。等級役割との違いは「個別性」です。等級に対しての役割は会社として定めた一定のものを遂行してもらいながら、各社員で個別に遂行してもらいたいミッションや成果というものが存在します。

そういったものに関しては、目標管理制度を用いて個別性の高い役割として評価基準を設定していき、管理し、評価するというサイクルを作り出す必要があります。そのサイクルが組織づくりの好循環を生み出し、売上を上げる組織を作り上げていきます。

| 評価基準を作ることで

評価基準を明確にすることで、これまでお伝えしたようなイメージの組織づくりが可能となります。もちろん評価基準があいまい、不明確なままの会社も多いですし、その状態でも組織として機能している会社も多く存在します。そういった企業はそのままでも良いと思います。

ただ、評価基準が不明確なことで自社に何かしらの課題があるようであれば、評価基準を作ることでその課題がクリアできた会社も多く存在しますので、ぜひ明確な評価基準を作り、社員成長、ひいては会社成長に繋げていただければと思います。

 

WITH株式会社

 

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著者情報
佐々木 啓治 / WITH株式会社 代表取締役

日本で唯一の「年商30億円の壁」超えに特化したコンサルタント。

これまでサポートしてきた企業の徹底的な分析を行い、年商10億円で数年間停滞している企業が年商30億円を超えるためのノウハウを独自開発。

顧客企業の経営者からは「斜陽業界である当社のような会社でも、本当に年商30億円を超えることができた」「これまで5年間、年商10億円で停滞していたが、お陰様で昨年目標であった年商30億円に到達した」と高い評価を得る。

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