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【最新】「失敗しない」人事評価制度の作り方

人事評価制度

 

人事評価制度は中小企業が組織を作っていくうえで欠かせないものであり、理念浸透や社員教育、マネジメント強化、社員のエンゲージメント向上に伴う定着強化、など、しっかりと運用することで様々な効果を得ることができます。

しかし片方で「人事評価制度を導入したけど、結局失敗してしまった」という中小企業が多いのも事実です。

今回は中小企業が陥りがちな「失敗してしまう人事評価制度」の解説と共に、どのような形で人事評価制度を作っていけば「失敗しない人事評価制度」となるのか、その考え方と手順についてお伝えしていきます。

失敗している「人事評価制度」とはどのようなものか?

【1】作ったはいいものの、運用し切れず「形骸化」してしまっている

ネットや書籍など、独学で人事評価制度の作り方を学び、その手順通りに作ってみたはいいものの、「人事評価制度自体が機能しない」「社員から評判が悪い」「運用の仕方が分からない、時間がない」「人事評価制度を導入しても何も変わらなかった」という形で、結局は運用をしなくなり形骸化しているケースが多くあります。

このような形骸化してしまう多くの原因は、自社の実態に即して人事評価制度を作るのではなく、「テンプレートに沿って」人事評価制度を作ってしまっている企業に多く見られます。

時間と労力を使ったにも関わらずこのような状態になってしまうのは非常にもったいないと言えます。

 

【2】社員が人事評価制度を理解しておらず重要視していない。

人事評価制度の作り方を学び、その手順通りに作ってみて実際に運用したところ、いつまで経っても人事評価制度の中身や運用方法などを社員が理解していない状況のまま進み、「何をしているんだろう。これで給与が変わるんだろうけど。」ぐらいの意識で、作業として人事評価制度が運用されている状態になっているケースが多く見られます。

これは人事評価制度の導入時において、その目的や重要性、意図などをしっかりと社員に伝えられていないことによるのが多く、そのため社員の理解度が不足したままになっているということが考えられます。

また、一般社員だけならまだしも、人事評価制度を運用するキーパーソンとなる管理職(一次評価者)自身も制度の理解が不足しているまま運用している、ということも珍しくありません。

結果的に「人事評価制度を導入したい」という経営層の自己満足になってしまっていることがあります。

 

【3】期待した効果が生まれていない。

経営者の方は何かしらの効果を期待して人事評価制度を作り、導入する場合がほとんどです。

例えば、「全社員が納得する評価の仕組みにしたい」「しっかりと組織化していきたい」「マネージャーに部下育成の意識をもってもらいたい」「社員のモチベーションを上げていきたい」などです。

しかし、実際に人事評価制度を運用してみると、そういった期待していた効果が生まれていないケースが多くあります。

これは先述しているように、人事評価制度自体の理解が全社的に不足していることや、また人事評価制度を作ることが重視され、期待した効果を生むための「運用」に力を入れていなかったり、運用の方法が正しくない、ということが考えられます。

 

 

これら3つが失敗している人事評価制度の代表的な例です。

こういった失敗をしないためにも、「企業ごとの正しい人事評価制度の作り方」でつくることによって、失敗しない人事評価制度を作る必要があります。

 

「失敗しない」人事評価制度の作り方

企業によって正しい人事評価制度の作り方は異なりますが、ここではどのような企業でも概ね失敗しないスタンダードな人事評価制度の作り方のをお伝えしていきます。

 

失敗しない人事評価制度の作り方 Step.1 「社員ヒアリング」

失敗しない人事評価制度の作り方の最初のステップは、社員に対してのヒアリングを実施することです。

誰のための人事評価制度かと言うと、多くの場合は「社員のため」ひいては「会社のため」ではないでしょうか。

そうであれば社員が現状、人事評価制度についてどのように考えているのかをヒアリングする必要があります。

失敗している人事評価制度になってしまっている多くの会社はこのステップを実施していません。

そうすると経営者や人事部の目線で作られた、「作り手側」だけの想いが込められた人事評価制度が作られてしまいます。

そのような作り方でも、しっかりと人事評価制度が機能している企業であれば問題ありませんが、多くの場合は「作り手側」だけの想いが込められた人事評価制度では失敗しています。

ただ、ここで勘違いしていただきたくないのは「社員が望むような人事評価制度を作る」ということではありません。

企業を経営する側からすると、そのような人事評価制度の場合「給与を高く設定したい」「賞与が多く欲しい」「評価を下げたくない」など社員都合の人事評価制度が作られてしまい、人事評価制度自体の運用はおろか経営が立ち行かなくなってしまいます。

そうではなく、しっかりと社員の現状、過去、そして未来に向かってどのような考え、価値観、会社に対する想い、などをしているのかをしっかりと把握し、「会社にとっても社員にとっても」双方が良くなっるような、納得できるような人事評価制度を作ることが重要です。

社員目線においても会社、経営から一方的に与えられたものではなく、社員ヒアリングというステップを踏むことで「我々社員の意見も聞いてくれる」という感じを受けます。

そのためにこのStep.1で社員に対してヒアリングを行うことが重要ですし、またこれによりStep.2以降の作り方と作る内容に大きく影響を与えます。

社員ヒアリングをスタートにすることで、失敗しない人事評価制度の土台が出来上がっていくのです。

 

失敗しない人事評価制度の作り方 Step.2「人事ポリシーの設定」

失敗しない人事評価制度の作り方の次のステップは、人事ポリシーの設定です。

人事ポリシーとは「会社の人に対する考え方を表明したもの」です。この人事ポリシーが自社の人事評価制度を構築、運用していく上での土台となります。

人事ポリシーは図のように、企業理念や企業ビジョン、そしてミッション、バリュー、行動指針といわれる「会社の在り方」を示すものを根幹におきます。

そして社員の想い。

Step.1の社員ヒアリングで、社員が会社に対してどのような想いをもっているか、も非常に大事な要素です。

この人事ポリシーは経営者の想い。(理念やビジョン、ミッションやバリュー、行動指針などに言語化)これを社員に浸透させるツールとしての役割でもあります。

もし、現時点で自社の理念やビジョン、ミッションなどが全社で浸透していないと感じられた場合は、これらをもう一度見つめ直す必要があります。

効果的に運用できていない人事評価制度になっている会社は、こういった人事ポリシーをしっかりと設定せずに、場当たり的でテクニック要素を盛り込んだだけの「無機質な人事評価制度」になっていることが非常に多いです。

このような人事評価制度では社員に何も訴求できずに「ただ在るだけ」の人事評価制度になります。

「何を評価するのか?」からスタートして考えるのではなく、「会社としてどう在りたいか。どのような社員になって欲しいか。どのような社員を評価するのか」そういった根幹の部分を軸として定めてから人事評価制度の具体的な作り込みをスタートすることで、失敗しない人事評価制度の土台が出来上がるのです。

 

失敗しない人事評価制度の作り方 Step.3「評価基準の作成」

人事ポリシーを決定し、会社の根幹の考え方を定めた後に評価基準の作成をします。

まず最初に、会社としての組織階層を設定していきましょう。階層を設定する上で良く用いられるのは「等級」という考え方です。組織の序列を等級として、1、2、3、4、5・・・という形で数字で表記していきます。

会社の考え方や、ビジネスモデルなどによってどの程度の階層を設定するかは変わりますが、概ね我々がサポートする顧客では、会社規模で設定する場合が多いです。

例えば、年商10億未満の会社であれば等級数は5か6。年商30億未満の会社であれば7か8。年商100億未満の会社であれば9か10。という数字が目安です。

ただ一点、等級数を設定するにあたっての注意点は、「現在の会社の状態」に合わせた設定ではなく、「将来なりたい会社の状態」に合わせた形で設定した方がいいでしょう。

一般的に人事評価制度の耐用年数は5年と言われています。5年の間で組織や会社規模が変わることが予想されるのであれば、5年後の組織イメージをもって制度を構築しないとすぐに機能しなくなります。

「そんな先のことは分からない。」とおっしゃる方もいますが、先のことは分からずとも目標や仮設を立てて意思決定をすることが経営者の仕事だと思いますので、ぜひそういった観点で設定してみましょう。

ー 各階層毎の「期待役割」を設定する

将来の組織イメージで階層数を決定した後に、各階層毎の「期待役割」を設定していきます。

期待役割とはその名の通り、その階層の人材に仕事上、期待する役割を指します。この期待役割を設定することで、社員から見た時にも「この役割が自分に求められていること」と理解することができます。

そしてその期待役割こそが評価項目になります。

失敗しない人事評価制度、そして売上を上げる人事評価制度を構築していくためには、評価項目を会社の中期計画と連動させることをおススメしています。

先ほど、級数を設定するにあたって、「現在の会社の状態」に合わせた設定ではなく、「将来なりたい会社の状態」に合わせた形で設定した方がいい、とお伝えしましたが、その将来なりたい会社の状態を具体的にし、社員に明示することが必要です。

今期、来期目標はもちろん、3年後、5年後、どれぐらいの売上、利益、組織規模になっているかということを中期計画として策定し、それを社員に共有します。

そして、その5年後にどのような会社になっているのかを共有した上で、「そういった会社になるために各階層にこういった期待する役割があり、それが評価項目になる」という形で連動させるのです。

そのような形で進めていくと、なぜその階層の社員はその期待役割なのか、の理解が違ったものになります。

ー 教科書か、オリジナルか

期待役割はどのように設定していくか。考え方は大きく2つあります。

それは教科書か、オリジナルか、ということです。

期待役割を設定していく上で教科書というのは、一般的に使われている項目を引用する、という意味です。期待役割、評価項目で教科書的な存在は「コンピテンシー」というものです。

コンピテンシーとは何かというと、「世界中で活躍しているビジネスパーソンの行動特性を辞書にしたもの」です。つまりデキる社員の行動をひとまとめにしたものです。

ある程度項目が教科書としてあるので、それらから各階層に求める役割を抜粋し、当てはめていく、という考え方です。

コンピテンシーは、普遍的な考え方と行動が定義されているので、メリットとしては、どのような企業でも相応に期待役割として設定しやすい、またオリジナルと違い設定するまでに時間と労力がかからない、ということがありますが、デメリットとしては、普遍的な考え方と行動のため、抽象的な表現になり、結果的に評価をする際にも抽象的な評価になってしまいやすい傾向が高くなることです。

ただ、基本的にはビジネスパーソンとして活躍するために必要な項目が揃っているので、全てが習得、行動できれば成果の出る社員が育成されることは間違いありません。

もう一つの考え方は、自社に合わせて完全にオリジナルで評価項目を作成し、構築していくことです。

コンピテンシーの考え方を踏襲しながらオリジナル化する場合もありますが、いずれにしても自社のビジネスモデルや考え方、組織の作り方を考慮し、各階層の期待役割をオリジナルで構築して設定していきます。

メリットとしては、当然自社に合わせた形のオリジナルな評価項目なので、具体化された表現で社員には非常に分かりやすく、行動もしやすい。また評価者としても具体的に評価しやすい点にあります。

ただ、デメリットとしては、構築までに非常に時間と労力を要します。また、評価項目の表現を具体的にすればするほど、社員が行動に制限をかけたり、会社の動向による変化に対してそぐわない評価項目になってしまう、という柔軟性が低い制度になってしまう可能性もあります。

どちらで作る場合も(または折衷でも)企業のビジネスモデルや組織形態、考え方によって適性かが変わります。良い悪いではなく、そういった観点で作ることをおススメしています。

失敗しない人事評価制度の作り方 Step.4
「評価点算出ロジックの構築」

失敗しない人事評価制度の作り方のStep4は、評価点を算出するロジックを構築することです。

評価項目が決定した後に行うことは、各評価項目を何段階で、またはどのような点数で評価していくかを明確にし、ルール化していく必要があります。各評価項目の点数がどのような構成になっていて、その最終的な点数を評価に換算し、どの評価であればどれぐらい給与や賞与にインパクトを与えるのか、というロジックを組み、全社員に分かりやすいようにしなければいけません。

このロジックがあいまいなものだったり、分かりにくいものだったりすると、社員への浸透度が薄くなり、導入しても失敗してしまう人事評価制度を作ることになってしまいます。

また、評価ロジックとしては、上記のような評価点算出のためのロジックとは別に、どのような構成で総合評価を行っていくかを決めていく必要があります。

Step3で構築した評価基準はいわゆる「プロセス評価」の項目となります。会社によってはプロセス評価一本で評価を決める場合もありますが、多くの場合はプロセス以外にも「業績の評価」や「行動指針に対する評価」、「情意評価」「スキル評価」など様々な組み合わせで総合的な評価を算出していきます。

どのような評価の組み合わせで構成するかは、企業としての理念やビジョン、風土、そして中期計画、及びビジネスモデルなどにより変わりますので、自社にとってどの評価構成が適正かを見極めながら作っていく必要があります。

ー 非営業部門(技術職や内勤等)の評価について

多くの企業で評価がしにくいと言われるのが、非営業部門の社員の評価ではないでしょうか。営業職であれば、明確に評価を数字(業績、結果)でデジタルに表記できるため、実際、評価をする側としては至極簡単です。

しかし、評価を数字で表しにくい部門の場合はそうはいきません。数字で表せないとどうしても抽象的な評価項目と評価結果になってしまいます。

失敗しない人事評価制度を作っていく場合、この非営業部門の評価項目をどのように作っていくかも重要となります。

いかにして納得性の高い人事評価制度を構築し、全社員に浸透し、組織マネジメント力を上げ、売上を上げる人事評価制度を作っていくか、非営業部門においてもなるべく数値化できるような形でマネジメントが導いていかなければいけません。

また、コース制や個別特性を考えた人事評価制度にすることで柔軟に対応していく場合もあります。

一点注意なのは、非営業部門における数値化は、「減点方式」の評価数値にしてはいけない、ということです。どういうことかというと、よくある失敗パターンは内勤職の「ミスの数」を評価項目に置く会社の場合です。

減点方式の評価項目では、これまで当社が見てきた会社でうまく機能したのを見たことはありません。従業員の意識や意欲を上げるための人事評価制度が見事に逆効果になっていることがほとんです。

基本的に人間は、何かを積み重ねて成し遂げる、成長する、ということを実感して、それが意欲や意識の高さに繋がっていきます。減点評価に汲々として日々仕事をしていくとそのような方向には向きません。

注意しましょう。

失敗しない人事評価制度の作り方 Step.5
「給与テーブルの作成」

失敗しない人事評価制度の作り方の最後のステップは給与テーブルの作成です。

まず前提としては、「どの等級の社員がどの程度給与を貰えるのか」を明確にすることです。社員の退職理由のベスト5に必ず入っている項目が「キャリアパスが見えない」という意見です。

自分自身がこの会社の中でどこまで上に行けて、そこに上がった時にはどれぐらいの給与が貰えるのか。これが明確ではないと日々のモチベーションにも影響し、そして退職にもつながっていきます。Step1の社員ヒアリングで「この会社で先が見えない」という言葉が社員から出てきている会社はかなり要注意です。

また、Step4の評価ロジックと連動して、どの評価になったらどれぐらい給与が上がるのか、ということをこの給与テーブルで明示しないといけません。

自身の頑張りが目に見える形で評価され、給与が上がる、という当たり前のことをしっかりと明確にしていきましょう。

「今期これぐらい頑張って、これぐらいの評価をとれば、これぐらい給与が上がる。または昇格できる。」ということを目標として日々仕事に取組み、そして上司も同じ目標をもって部下をマネジメントしていく会社と、そういったことが全くない会社、不明確な会社では業務パフォーマンスが全く異なり、企業成長も異なります。

給与テーブルについては様々な考え方がありますが、多くの企業で採用されているのが等級号棒制の給与テーブルです。号棒が変わることで昇給降給になる、上げ下げが明確な制度です。また、等級号棒制とは別にグレード制という考え方もあるでしょう。通年の評価の中で自身のグレードに配置され、給与が決まるという考え方です。

どのような給与テーブルでも機能はしますが、自社にとってどの作り方が社員に魅力を感じてもらえ、上手く機能するかを考えて作っていく必要があります。

ー 降給の考え方

会社によって、降給というものを設定していない会社を多く見かけます。自社の理念やビジョン、人事ポリシーや風土にも寄りますが、基本的には降給(そして降格)の仕組み、ルールを明確にすることをおススメします。

失敗する人事評価制度は、降給降格を明確にしていない場合が多いです。

頑張れば評価が上がり、給与が上がる、ということは当たり前ですが、頑張らなくても特に罰はなく、給与も変わらない、という構造になっていると、頑張っている社員の意欲にも影響しますし、組織的に「ぶら下がり社員」が続出します。

失敗しない人事評価制度にするためには、降給、降格というものを明確にルール化しましょう。

失敗しない人事評価制度の作り方 まとめ

ここまで失敗しない人事評価制度の作り方を書いてきましたが、細かい作り込みももちろん大事ですが、作り込み前の準備段階や、作り込みの際の考え方、という部分について厚く書きました。

具体的な作り込みのテクニックを駆使しても失敗しない人事評価制度は作れません。

根本的に失敗しない人事評価制度を作っていく上で、どのような考え方で構成していかなければいけないか、ということを理解しなければ「仏彫っても魂なし」の状態になってしまいます。

ぜひこういった考え方を理解いただき、失敗しない人事評価制度を作っていただきたいと思います。

 

著者情報
佐々木 啓治 / WITH株式会社 代表取締役

日本で唯一の「年商30億円の壁」超えに特化したコンサルタント。

これまでサポートしてきた企業の徹底的な分析を行い、年商10億円で数年間停滞している企業が年商30億円を超えるためのノウハウを独自開発。

顧客企業の経営者からは「斜陽業界である当社のような会社でも、本当に年商30億円を超えることができた」「これまで5年間、年商10億円で停滞していたが、お陰様で昨年目標であった年商30億円に到達した」と高い評価を得る。

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