創業30年の時期に事業の転換期
当社は1959年に私の父が創業した企業で、創業から30年は包装資材の販売が事業の中心でした。
そして創業30年を超えた1995年に、当時からお取引のあった百貨店の外商の方より「顧客であるカード会社の発送代行をして欲しい」という依頼があり、その依頼からスタートしたのが現在の当社の中心事業であるキャンペーン事務局代行の事業です。
この事業のスタート当初こそ発送の代行のみをサポートしていましたが、お客様の手間を削減するようなサービスや、キャンペーンを成功させるための仮設検証に必要なデータの収集など、当社からご提案させていただいたサポートにお喜びいただき、それらの積み重ねから信頼を頂くようになったことで、キャンペーンにおける全般のサポートをさせていただくという、現在のサービス領域まで広げることができました。
現在では百貨店のほか、飲料メーカーや広告代理店など、大手・中堅規模の企業との取引がメインとなっており、まさに創業30年の時期に、当時の包装資材の事業のままでは生き残れなかったであろう、事業の転換をすることができました。
売上は安定していたが・・・
そのように信頼を積み重ねていった結果、お取引企業も名のある大手や中堅企業ばかりということもあり、売上は良い意味で安定していました。
私自身、「売上を拡大させていきたい」「急成長していきたい」という考えはそれほど持っておらず「着実に成長させたい」という方針でしたので、売上が安定していること自体に大きな不満はなかったのですが、組織として見てみると社員はもちろん真面目に働いてくれているのですが、なんとなく漫然と働いているというか、夢や目標、働きがいのようなものをもって働いている社員が少ないな、と感じていました。
創業歴が長い会社ほど同じような感じ方をしている経営者も多いと思うのですが、表面的になにか大きな問題があるわけではないのですが、より社員が生き生きと働くような、やりがいや高い意識をもって働く組織風土にしていきたかったのです。
鉛筆をなめて評価をしていた
そのような組織風土をつくっていく1つの考え方として、しっかりとした人事評価や給与体系が必要なことは経営者仲間や様々なセミナーなどを通して見聞きし、感じていましたが、実際当時は会社規模も小さかったこともあり、社長である自分がいわゆる「鉛筆をなめて」評価や給与を決めていく、という典型的な形でした。
それが表立って社員から不満が出るようなことはなかったのですが、「〇〇ができると評価されて、これくらい給与が上がる」という明確なフィードバックが社員に対してできなかったり、逆に、「〇〇をすると評価が下がる。給与も上がらない」ということも社員に伝わらないという状況は良くないな、と思っていました。
社員それぞれに対して社長である自分が日常のことで注意をしたり、評価をしたりということをやってはいるものの、私も人間なので、どうしてもその時の状況や気分などによってそれらのフィードックに一貫性がなかったりするため、評価される社員側からすると「嫌だろうな」「不公平感があるのでは」と感じていました。
明確で公平感ある制度へ
そのような組織から、公平感があり、誰が見ても分かりやすい人事評価制度に変えていきたい、という思いで様々な伝手を辿ったり調査をした結果、縁があって佐々木さんに辿り着きました。
実際に人事評価制度を構築していく際は、よくあるテンプレートのようなものでつくるのではなく、当社の業種や職種の特徴に合わせた形で、ほぼ1からつくっていくプロセスが印象的でした。
また、人事評価制度をつくるだけではなく、形骸化しないように自社内でしっかりと運用できる状態になるまで運用フォローをしてもらったことも大きかったです。
結果、社員から見ても「何をすれば評価されるのか」「どのような評価でどれくらい給与が上がるのか、昇格できるのか」が明確になり、かつ評価をするのが社長である自分だけでなく、管理職が一次評価をし、査定会議の場で全社員を最終評価していく、というプロセスで運用できているため、公平感ある制度になっているのではないかと思います。
制度自体も何年かに1回、時代や組織の変化に合わせてチューニングしており、良い形で運用し続けられています。
組織体制の変更と新卒採用による化学反応
そのような人事評価制度と並行する形で、当時は営業部と業務部、という形の「機能別組織」で運営していましたが、佐々木さんからの提案で1つのグループに営業と業務を混同させ、複数のグループでそれぞれ顧客アカウントを持ちながら運営していく「チーム型組織」へと組織体制を変更しました。
従来の機能別組織の時には、お互いの部の目的や目標の違いから、営業部としては「ある程度安くても、無いよりは仕事をとったほうがいい」に対して、業務部としては「安くて難易度の高い仕事では採算が合わないし、メンバーも疲弊する」という、多くの会社でもよくあるような部署間における軋轢が多少なりともありました。
そこで、人事評価制度をつくる際にも、評価の項目に「チームプレイ」に関わるものが多かったこともあり、その制度の一新とタイミングを合わせる形で、チームごとにある意味での独立採算制を担い、チーム単位で利益と業務量の管理をしていく、という組織体制へ変更することで、従来のような組織感情の課題の払拭を狙いました。
この変更により、機能別組織で起こっていたような軋轢はほぼなくなり、それぞれのグループが利益を意識して仕事をするようになったのと同時に、以前にも増してお客様に対して良いサービスを提供していこう、ということに意識が集中するようになりました。
加えて、これまでは人材採用も中途採用のみだったのですが、新卒採用をスタートし始め、社内に新しい風を吹かせることができました。
もともと新卒採用も佐々木さんから提案されていて「ウチの会社だとまだ早いのではないか」としばらく二の足を踏んでいましたが、2013年に意を決して実施に踏み切りました。
実際に新卒採用を実施すると「教える体制を整えなければ」という意識が会社にも、そして既存の社員にも芽生えるため、教育の仕組みを構築しなければいけない、という動きが加速されましたし、既存の社員も「しっかりと教えよう」という意識が出てきたのはとても良かったと思います。
また、人事評価制度で明確にしたこともあり、現在では新卒出身のメンバーがグループのマネージャーになるなど、年功序列ではなく、実力のある社員が確実に昇格していく、という形で組織の活性化が見られます。
常にブラッシュアップし続ける
このように様々な施策を講じてきましたが、それらがしっかりと成果に結びついているのも、常にブラッシュアップをし続けてきたからではないかと思っています。
仕組みとして構築してきた人事評価制度については、会社としての戦略や入社してくる社員の特性などによってマイナーチェンジをしています。
特に直近では、当社の業務特性から社員の「スキル」に対してよりフォーカスを当てた形にしており、プラス業務量を独自の指標で評価換算することで、現在の自社により適合した制度として運用していきます。
さらに今期に関しては、株式会社としては50期を超えたタイミングで、気持ちとしても新たにという意味も含め、これまでの「経営理念」「経営基本方針」を一新しました。
これらも佐々木さんにお手伝い頂きながら、つくるだけではなく運用し、そしてブラッシュアップし続けることで、当社としてもより長く存続していき、そして着実な成長へとつながっていくのではないかと思っています。
売上は倍。粗利益率は上昇の一途。そして未来へ向けて
先述したように、私自身は自社を「急成長させたい」というよりも「着実に成長させたい」という思いのほうが強いのですが、結果的にはこれら人事評価制度から組織体制の変更、新卒採用と様々な施策が化学反応した形で、当時から売上は倍になりましたし、粗利益率は年々上昇の一途を辿っています。
私自身も以前にも増して、自分が会社を引っ張るというよりも、社員1人ひとりの成長が大事であり、それこそが企業存続に必要なことだという思いを強くしています。
2019年に創業60年を迎え、今年度は経営理念や経営方針を一新するなど、未来へ向けて更なる発展を目指しています。
急成長ではなく着実な成長、という方針は現在でも変わっていませんが、何よりも会社として利益を上げ続けることで存続し、それが同時にウチで働いている社員1人ひとりの幸せに繋がっていく、そのようなビジョンを描いています。